(14.旅行)

+旅+



「それじゃあ、二人とも。三時にはここに戻っていらっしゃい」

「わかってるよ、母さん」

「じゃ、いってきまーす」



旅館の入り口から、街へと出て行く二人。

今日、福沢一家は珍しく家族旅行で温泉街に来ていた。



「ね、祐麒!早く行こうよ!」

「ちょ、ちょっと待てよ!」



今までに来たことのない土地で、

祐巳ははしゃぎ回っていた。

旅館に着くや否や、祐麒を誘って、街へ出よう、と提案してきた。

どうせすることもないから、と祐麒も腰をあげる。



「それで?どこに行くんだよ」

「どこでもいいのー」

「はぁ?」

「なんか面白そうなお店に入ってみたいの!」



そこには、こういう土地特有の『お土産屋』というものが

立ち並んでいた。

一軒入っては、そこに並ぶお土産に目をキラつかせて、

また次の店で、新たなお土産に視線を奪われている。



「…なんで女って、こんなのが好きなんだろうな」

「うるさいなぁ。いいじゃない」



姉の買い物に付き合わされ、大きな溜息を吐いた。



「折角なんだから、友達にお土産でも買っていけば?」

「え?別にいーよ。そんなの…」

「柏木先輩に買っていってあげると、喜ぶかもよー?」

「…まじ、勘弁だから…」

「あははは、冗談よ」



見る見るうちに、祐巳の手にはお土産の山が出来ていた。

先程から、これは祥子さま、これは令さま、これは由乃さんと志摩子さんに、

これは瞳子ちゃんと可南子ちゃんと乃梨子ちゃんに……

そんなこんなで、山のような荷物になっていたのだった。



「う〜…重たい…」

「自業自得だろ?」

「祐麒のけちー!手伝ってくれたっていいじゃない!」

「持ってるだろ!?もう両手いっぱいなんだよ」

「だってー…」



可愛かったんだもん、とぶつぶつ文句を漏らしている。

可愛いからって、普通ここまで買うか?と祐麒は心の中で呟く。



「――――あ」



祐巳が何かを見つけたのか、立ち止まった。



「今度はなんだよ」

「あそこ!すっごい素敵なお店!」



指を差すその方向には、西洋アンティーク雑貨店と書かれた看板があった。



「……祐巳。行ってもいいけど、荷物をおいてこないか?」

「それもそうね」



ひとまず二人は旅館に戻り、荷物を置いた。



「あらあら。いっぱい買い物したのね」

「えへへ。買い過ぎちゃった」

「買い過ぎちゃったじゃないよ……」

「何か言った?」

「……いいえ」



再び街へ出て、先程見つけた店へと向かう。

その名前の通り、祐巳の好みの雑貨がたくさんあった。



「うわぁ…いいね」



一通り店を見回った後、祐巳はピタッと歩みを止めた。

それはロザリオが並ぶコーナーの前だった。



「……買うの?」

「え、あ…まあ…欲しいなーとは思うけど…」



しかし祐巳はそのロザリオの値段を確かめ、首を横に振った。



「駄目。お金が足りないわ」

「でも、祐巳はロザリオ持ってるだろ?」

「あれは祥子さまに貰ったものだもの。自分の妹には、ちゃんと買ったのをあげるの」

「そんなものなんかね」

「祐麒にはわかんないわよ。もう行きましょう」

「そんなこと言ってても、これ、欲しいんだろ」



う、と図星をつかれ、祐巳は黙り込んだ。



「……いらっしゃい。欲しいものがあるのかな?」



二人の声が聞こえたのか、店の奥から主人である老人が出てきた。

老人は祐巳の元へとやってくると、ロザリオを手に取る。



「これはな、わしが昔宣教師をやっていた頃に使っていたものなんじゃ」

「そんな大切なもの、売っていてもいいんですか?」

「いいんじゃよ。わしには必要ないものだ」



老人はそのロザリオに付けられた値札の値段を書き換えた。



「さ、お嬢さん。これでいかがかな」

「いいんですか!?」

「構わない。お嬢さんのような人に買われるのなら本望じゃ」



祐巳は嬉しそうにそのロザリオを手に取る。





「ありがとうございました」



ロザリオを買い、ホクホク顔の祐巳の隣を歩く祐麒。

その不機嫌そうな顔を見て、祐巳は声をかけた。



「……やっぱり姉妹の話をすると、不愉快?」

「そうじゃないけど…なんか」

「もやもやする?」

「ん、そんな感じ」

「もう…いつまで経っても子供なんだから」

「なっ!そんなんじゃ――――」



横を向いた瞬間、祐麒の目の前に祐巳の顔が近づいていた。

そして、軽く触れるようなキスをする。



「……私が一番大切なのは、あんたなんだから、もう少し信用してよ」

「…祐巳」

「さ、戻るわよ。もうすぐ三時になるわ」

「うん」









第14弾、14.旅行

結局何が言いたいのか、よくわからなくなってきました…

趣旨としては、姉妹話を出して、それにヤキモチを焼く祐麒。

そんな感じ。もう、旅行関係ないって感じ☆(笑)

久々なので、リハビリ作品みたいな……

15以降は、流れて行くかと思います。



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