ここはアルカディアの約束の地と呼ばれるところだ。
見晴らすほどの草原、花畑がある。
真ん中にそびえ立つ大きな大樹は全てを包み込むような大らかさがあり、よく恋人達が二人でいるのを見かけることがある場所だ。
「あー、マルセル、ランディ、ゼフェル、コレット。研究用の草花の採取を手伝っていただいて、本当にありがとうございます」
「いいんですよルヴァ様!僕たちもちょうど暇してたところだし……ね、みんな」
マルセルは後ろを歩く三人を見た。
「もちろんですよ、ルヴァ様」
「……別にオレは暇だとは言った覚えねーけどな…」
「ゼフェル!」
文句を言っているゼフェルを諫めるようにランディは名前を呼んだ。
「うっせーな、ランディ野郎のくせに」
「なんだと?!」
いつもの口喧嘩が始まりそうになるのをみて、マルセルは止めに入った。
「止めなよー、二人とも」
しかし、全く耳を貸そうともしない。無論ルヴァが言っても同じだ。
「もう…。ごめん、コレット。二人を止めてくれる?」
「はい」
ニコッと笑っていつの間にか離れていた二人の元へ行き、各々の手を取って言った。
「お二人とも、喧嘩は止めてください。私…お二人が喧嘩してるのを見るのは辛いですから」
笑顔のコレットを見ると、二人とも心にあった怒りの感情が溶けていくのを感じた。彼女の笑顔は何にも勝るものであった。
「「コレット……」」
「やっぱ、二人を抑えるにはコレットが一番いいね」
「そうですねー……おや?」
ルヴァが何かを見つけたように花畑を見た。
「どうしたんですか?ルヴァ様…」
「マルセル様、彼処に――」
コレットも気づいたらしく、指を指す。彼女の指さした方向に光の柱が立っていた。
「なんだぁ?」
五人は慌てて駆け寄ってみる。するとそこには、一人の少女が倒れていた。
「う…ん――」
「大丈夫ですか?」
「ここ、は……」
「ここはアルカディアの約束の地です」
少女はハッとして、勢いよく起きあがった。
「あたし―――!!」
いきなり大声を上げたかと思えば、次の瞬間には顔が真っ青に青ざめていた。
「あー大丈夫ですかー?」
「あ、あなた達は……?」
「僕たちは……一応、君がここに倒れてるのを発見した人達、ってとこにしておこうか」
「それより、君の名前は?」
ランディはその少女に名前を聞いた。
「あたしは……ルシア――」
「ルシアさんですか。…いい名前ですね」
コレットは手を差し出した。それをとろうと思ったルシアだが、クラッときて、コレットに寄りかかるように倒れてしまった。
「ひどい熱――みなさん、とりあえずルシアさんを私の部屋に運んでもらえませんか?」
「おめーの頼みだったら断るわけにいかねーよ」
「みんなで協力すれば大丈夫だよな」
「じゃ、じゃあ僕は、解熱剤とか取りに行ってくるよ!」
マルセルは一人先に、自分の館へ戻っていった。
「それじゃあ私は、女王陛下の元へ行って、事情を話してきますねー。コレット、ゼフェル、ランディ。その娘を頼みましたよ」
「……あ、れ……?」
「あ、気がついたのね。…よかった」
上半身を起こして周りを見回しているルシア。
「ここは私の部屋よ。あなたがひどい熱を出していたからとりあえずここで寝てもらっていたの」
「ありがとう。……貴女の名前は?」
「私はアンジェリーク=コレット。みんなからはコレットって呼ばれてます」
「どうしてアンジェリークって呼ばれていないの?」
「それは……」
「コレット!陛下とロザリア様が見えているヨ。今そっちの部屋にお通しするから…」
ギィ、バタン
ドアが開き、陛下と補佐官の二人が入ってくる。
「そっちの娘が話しの娘ね」
コレットは二人を椅子に座らせた。そのすぐあと、レイチェルがお茶を持って入ってきた。
「ありがとう。――ところで…ルシアさんに聞きたいことがあるの。いいかしら」
「あ、はい。あたしにわかることなら……。ところで、あなた方はいったいどなたですか…?」
「自己紹介がまだだったわね。私はロザリア=デ=カタルヘナ。そしてこちらは宇宙を統べる女王陛下であるアンジェリーク=リモージュ様です」
宇宙……女王……
「イタッ!」
「どうしたの?」
「わからない…でも、突然頭が痛くなって――」
とりあえず再びルシアをベットに寝かし、また落ち着いたら話、ということになった。
女王陛下達が帰ってから数時間後、ルシアは目を覚ました。すっかり熱は引いており、気分はさっぱりしていた。周りに人の姿が見えなかったので、ベットから起きて部屋をでた。
人の話し声が聞こえる部屋の前に立ったまではいいが、ドアを開けられず立ち往生してしまう。
「……?ルシア、そこにいるのね。大丈夫よ、入っても」
コレットの声だ。ルシアは驚いてドアを開ける。
「…よく、わかったね、コレット…あたしがここにいるの」
ふふふっと笑い、ルシアを椅子に座らせる。ティカップにハーブティを注ぎ、ルシアの前にだした。
「そんなの、コレットにわからない訳ねーだろ」
「そうさ」
ゼフェルとランディは頷く。
「…あなた達は?」
「オレはゼフェルだ。こっちの奴はランディ野郎だ」
「何だと?!」
「止めてください、お二人とも。ルシアが怖がってます…」
コレットの訴えに、大人しくなる二人。
「ゼフェルさんとランディさん…?」
頭の中に名前と顔をインプットする。
ガシャン!!
廊下で何かが割れる音がした。コレットがドアを開けると、レイチェルが立っていた。足下には花瓶が落っこちている。
「どうしたの、レイチェル!」
「あっ…ご、ごめん。ちょっと……懐かしい感じがしたの」
ドクンッ!
その声を聞き、ルシアの身体がビクッとなった。心臓が勢いよく跳ね上がる。
(あたし……あの人のこと知ってるの?)
大きく首を振る。知っているはずがない、初めてあったのだから、と自分に言い聞かせる。
夜、ルシアは部屋を一つ用意してもらい、しばらくの間そこで暮らすコトとなった。
しかし、布団に入ってもルシアは寝付けずにいた。
(そう言えば…あたし、あの人達がどんな人なのか、まったく知らないなぁ…)
起きあがって、こっそりと外へ出る。どこでもいいから、広いところへ行きたかった。
着いた場所は約束の地。彼女が倒れていた場所だ。
「あたし、どうなるんだろう…」
大樹の根本に座り、頭を幹に預ける。
「…おめー、ルシアじゃねーか」
声がしたので見ると、そこにはゼフェルが立っていた。
「ゼフェルさん」
「なにしてんだよ、こんな夜中に」
眠れないので、というとゼフェルはルシアの隣に腰掛ける。
「ま、オレにはかんけーねーけどな」
「……一つ、お聞きしたいことがあるんですけど」
「ん?なんだよ」
「あなた達って、どういう人たちなんですか?」
…
……
………
「…まあ、なんて言うかな…オレがいったって言うなよ」
一瞬の沈黙後にゼフェルはぼそっと呟いた。
「オレ達は、宇宙を護る女王と守護聖だ。昼間来た金髪の奴いたろ?あいつが女王陛下で、オレとかランディとかが守護聖って呼ばれる奴だ」
簡単に女王と守護聖についてを説明する。
「へー…すごい人なんだね。で、コレットは?」
「コレットも女王だ。ま、オレ達の宇宙とは違った宇宙の女王だ。それと……」
何故か途中で口ごもる。不思議そうにゼフェルの顔を覗くルシア。
「それと、なに?」
「やっぱ止めた。これ以上はいわねえ」
教えて教えて、と詰め寄るルシアに仕方なく小さな声で言った。
「……コレットは、オレの恋人だ」
「うそっ!!!」
「だー!大声出すんじゃねえっ!!オレはもう帰るぜ!おめーもとっとと帰れよ!」
コレットとゼフェルさんが……
朝起きて、ルシアは「おはよう」と声をかけてきたコレットの顔をジッと見つめた。
「あ、の…ルシア、私の顔に何かついてる?」
「ううん。何でもない。……あたし、ちょっと出かけてくるね」
いってらっしゃい、と優しく微笑んで送り出してくれたコレット。
「でも何で、コレットはあの人が好きなんだろ。かっこいいけど口が悪そうなのに……」
再び約束の地に来たルシア。すると今度はランディがやってきた。
「あ、ルシアじゃないか。どうしたんだい、こんなところで」
ランディに声をかけられたのに気づき、ルシアは顔を上げる。
「ランディさん、あなたはコレットのことどう思いますか?」
「えっ、コレットのことかい?」
突然の質問に、ランディは困ったように前髪を掻き上げた。
「うーん…好き、だよ。コレットのことは。もちろん女王としての彼女も魅力的だけど、一人の女性として、ね」
「……コレットが、他の人と付き合ってたとしても?」
「もちろん。それに今だって彼女はゼフェルと付き合ってるのは知ってるし、邪魔する気もない。彼女が幸せなら、それでいいのさ」
そこまで言い終わると、ランディはしゃがみこんでルシアと視線の高さを揃えて恥ずかしそうに言った。
「でも、彼女を幸せに出来るのが自分じゃないっていうのはちょっと残念だけどな」
「ランディはゼフェルのことを嫌いじゃないの?」
「嫌いだなんて、そんなこと微塵も思っちゃいない。確かに口は悪いけど、根は優しい奴なんだ」
「ふーん……」
彼は立ち上がって膝に付いた砂埃を落として、ルシアに「用事があるから」といって去っていった。
「そういうものなのかな…幸せって」
「あー!またコレットがいない」
次の朝は、レイチェルの大声で目を覚ます。
「レイチェル……?」
「あっごめん、起こしちゃったネ」
「ううん。コレット……どうしたの?」
「ま、いつものことだけど。え、何がって?それは朝ご飯食べながらはなすよ」
二人で朝食を食べる。いつもはコレットがいるから三人なのだが。
「あのね、偶にコレットのところにお誘いに来る人がいるのよ。コレットは結構断れないから、つれていっちゃうのよね〜」
「ゼフェルさん以外にも……?」
「あれ、知ってたんだルシア。二人のこと」
彼女の言葉にルシアは頷く。
「教えてもらった。ゼフェルさんに」
「へー珍しい。ゼフェル様が他人にそのこと言うなんて」
本当に珍しそうな顔でルシアを見た。ふと、二人の視線が合った。
「―――ねえ、やっぱりワタシ達何処かで逢ったことない?」
「わからない。…でも、レイチェルのこと、すっごく懐かしく感じるんだ」
はぁ、っと溜息を吐く。
「考えてもわからないよネ。でもそれでいいのかも。だって、前がどうだったとしても、今こうして逢ってるんだからネv」
コレットはゼフェルの館にいた。しかし、一緒にいるのはゼフェルだけでなく、マルセル・ランディ・メル・ティムカもいた。
「ねえ、コレット…一つ、わかったことがあるんだけど……」
「何ですか?メルさん」
「ルシアにね、エルダとおんなじ《気》を感じるんだ」
「何だよ、それ」
その問いかけにメルは首を振った。
「わからないよ。何だよって聞かれても、そう感じるとしかいえないし…」
「ということはルシアはあの人の仲間ということになるんでしょうか」
再び首を振る。
「仲間、じゃないんだ。全く同じ、同一人物のような《気》なんだ。もちろん、少しは違うところもあるけど」
「同一人物…」
「そんなわけないじゃないか。エルダは見ての通り男の人だし、ルシアは女の子だよ?」
そうだよなぁ、と全員黙ってしまう。
「あ……私そろそろ帰らないと…」
コレットは五人に軽く会釈をして館を出てくる。
「おかえり、コレット!」
まるで主人の帰りを待ちわびていたようにルシアが飛びついてきた。
「ただいま」
夕食をとったあと、ルシアは自分のベットにゴロン、と寝転がる。
ウトウトと眠りそうになると、入り口のあたりに人影が見えた。
(…誰……?)
朦朧とする意識の中で、ルシアは問いかける。
「――貴女は――」
何かを言おうとしたが、途中で言うのを止めた。蒼い髪の男性は、フッと消えていった。
そのすぐあと、コレットがドアを開けて入ってきた。
「ルシア起きてるの?」
「あ、うん。ごめん、すぐに寝るから」
そう、といってコレットは部屋から出ていった。
すぐ後、ルシアは強い睡魔におそわれ、眠ってしまった。
夢の中――先ほど部屋に現れた蒼い髪の男性がルシアの前に再び姿を現した。
「ねえ、貴方はいったい誰なの?」
「……私の名はエルダ。女王の手により名づけられた」
「名づけられた?貴方の自分の名前は」
「私の名は遠き時空の彼方へ――」
「貴方も、記憶喪失なの?」
「私が覚えていることは―――」
「どうしたの…?」
「――貴女は、何も覚えていないのか……」
エルダは手を差し出し、ルシアの額に当てた。
「えっ」
そこから何かがルシアの頭の中に入ってきた。それは『記憶』の嵐。
「思い出したか――?」
「…うん。全部思い出した」
「………ルーシャス。これがあたしの本当の名前――」
次の日、ルシアは部屋から姿を消していた。しかし、捜索隊はでなかった。
なぜなら全ての人の記憶から彼女に関する記憶が全て消えていたからだ。
「……?」
レイチェルの部屋のテーブルに、蒼い羽根が一枚、おいてあった。
「なんだか、あの子のこと思い出すネ…」
その羽を大事そうに引き出しにしまう。
「ルーシャス……」
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いいわけ
うう、ごめんなさい!オリジナル設定ぶち込みまくりです!!
まず、ルーシャスが出てくること。これは、スペシャル2でエンディングの一つに聖獣EDあったじゃないですか。
あれのレイチェル版みたいなもの……かな(爆)
アルフォンシアが出るのに、ルーシャスが出ないってちょっと残念だったので。
ていうか記憶がない(はずの)エルダが彼女のこと分かったって言うのはどういうこと?
自分で書いておいて……(汗)
ちなみに、なぜルーシャスが女の子かっていうと、完璧に大人になるまでは男でも女でもなく、完全に成長したときに性別が決まる、と
勝手に作った設定のためなんです。で、アルフォンシア(エルダ)が男の姿になったので、ルーシャスは女の子になった、と。
ていうか、超絶ネタバレ話ですよね(汗)
しかもレイチェルが主役のような気が……(爆)
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