「と、言う事で、傷病第6世代のための、募金活動をやることになった。」


朝のHR。いつも通りのその時間、本田は、今朝のミーティングで決まった募金活動のことを連絡した。


「なんだよそれ、誰が決めたんだ?」


素っ頓狂な声を出して言った滝川は、女子生徒の鋭い視線に、口を慎んだ。


「…なんちゃって。」

「くだらん。」


彼が口を閉じたかと思うと、今度は舞が溜息を吐き、一言呟いた。

その声に敏感に反応したのは、壬生屋だった。


「くだらないってないでしょう?私たちだっていつそうなるか分からないんですよ!」


怒りを露わにして、壬生屋は言った。そんな彼女に対し、舞は再び溜息を吐いた。


「…そういう事を言ったのではない。…まあいい。勝手にするがいい。」


舞は席を立つと、教室を出ていってしまった。


「…まあ、とにかくだ。決まったんだからしょうがない。さっそく、行くか。」


本田は残りの生徒を連れ、新市街に向かった。そして1時間後・・・



「募金をお願いします!」

「募金ー、ぼきんー。」


しっかりとした女子生徒が先頭に立ち、声を上げて道行く人に声をかけている。


「しますっ。」


ののみも懸命に声を出している。


「…。」


一方男子生徒の方は声をあまり上げず、只々突っ立っているだけだった。


「声を上げてください。体が大きいんだから。」

「あー、募金をよろしく。お願いします!」


森はギッと隣にいた若宮を睨んだ。

それに気づき、若宮は声を出し始めた。

しかし、募金の方は全く貯まらなかった。

この調子だと、千円貯まればいい方だろう。


「なかなかたまらんねぇ。」

「勝手な奴等ばっかりだな。」

「まだ、私の日本はいいほうでス。」

口々に喋り始めるメンバーたち。それを見て善行は、休憩を提案した。


「やれやれですね。休憩しますか。・・・舞さんは来てないですか。」


善行の言葉に舞がいないことに気づく。結局あの後誰も姿を見ていない。


「あれ、舞…。」

「上手い逃げ方だこと。俺もそうすれば良かったかな。」

「怒りますよ。怒りますからね。」


瀬戸口は感心していた。逆に壬生屋は、瀬戸口のことをジッと睨んでいた。



5121小隊のメンバーが再び活動と始めようとしたところ、向こうから、次々と偉そうな人達が、

あせって走ってきていた。おそらく一個中隊くらいは居るであろう人数だ。


「あー、5121小隊の募金場所はここかね。」


その中の一人が、本田に問いかけてきた。その問いに頷く。


「募金だ。とりあえず百万ほどある。いいか、募金したからな!」

「へへへ。いや、これで例の件はお願いしますよ。」

「…お願いします。どうやお役に立ててください。」


その政治家や役人、社長等は、百万を善行に手渡し、慌てて去っていった。


「な、なんだなんだぁ。うぉ。すげぇ。」


本田だけでなく、その場にいた全員が目を丸くして、百万の札束を見ていた。


「いや、立派な大人ですね。こういう人たちばかりなら、日本の安泰だ。」


何処か台詞じみた言葉を発した坂上。


「…皆さん、顔色悪いですね。」


気が付いたら、凄い額の募金が集まっていたのだった。



「おつかれさん!今日はこれで終わりだー!さっさと家に帰れよ。」


本田の言葉に、皆散り散りになっていく中、瀬戸口は一人、学校へ向かっていた。

校舎はずれに着くと、そこには見慣れた少女の姿があった。


「お疲れ、舞。」

「?何のことだ、隆之」


近づいていき、そっとその躰を包み込むように抱きしめる。


「ん?あの政治家軍隊は、君の所為だろ?」


耳元にキスをしながら言った。


「……何故、私だとわかった……?」

「もちろん、舞のコトだったら、何でもお見通しさv」


舞は自分を抱きしめていた手を振り払い、その手の主を見た。


「誤魔化すな。ちゃんと話してもらう。」


眉間にしわが寄っている。こうなったら、ちゃんと話すまで、

彼女自慢の手にすら触れさせてもらえないだろう。


「壬生屋のお嬢ちゃんにくだらないとは何だって言われたとき、そういうことを言ったのではない、って言ってただろ?
あれは、そんなコトしなくても金をかき集める方法があったから、っていう意味だったんだろーなーって思ったから。」

「…………。」

「違ってた?」

「……聞くな。そなたは意地が悪い。正しい回答を言っておるのに違う、とは絶対にいえないのを知っていて……」


ほんの少し下を向いた隙に、瀬戸口は再び舞を抱きしめていた。


「さすがは俺のオヒメサマだ。えらいぞー。」

「こ、こらっ!子供扱いするな!私はののみとは違うのだぞ…!」

「んー、可愛いv」

「や、やめ……!」


この後何があったかは、秘密。ただ、次の日の舞は、速水が心配するほど疲れ切っていたそうだ。






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