「ねえ、イノリくんも海に入らないの?」
浜辺であかねが声をかけてくる。イノリは深く被っていた帽子を少し上げ、あかねを見た。
ワンピース型で薄紅色の水着を着ている彼女は、眩しいくらい光っているように思えた。
「?どうしたの…………きゃっ!」
水に足を取られて、体が倒れそうになるあかね。
「あか……!!」
「神子殿!!」
イノリが飛び出すより早く、頼久があかねを抱き留めた。
「ごめんなさい、頼久さん」
「いえ。それよりお気をつけください、神子殿」
しっかりと地に足をつけたのを確認して、頼久は手を離した。あかねはタタタッとイノリの元へと駆け寄った。
「イノリくん?」
「――心配させんじゃねーよ」
顔を真っ赤にさせて呟く。
「…ごめんなさい」
「謝る事はねーよ、あかね」
「天真くん」
あかねの後ろに天真が立っていた。上から見下ろすように見ていた。
「なんだよ、テンマ!」
「こいつは、頼久にカッコイイとこを取られたのが悔しいだけなんだから」
その言葉に、カッと頭に血が上る。
「嫉妬してるだけなんだよ。ま、せいぜい優しくしてやんな」
天真はそのまま横に置いてあったジュースの缶を持って、詩紋や鷹通、泰明のもとへいってしまった。
残った二人は、無言のまま向き合っていた。
「……ホント?」
「………」
「さらに顔を真っ赤にさせたって事は、きっと図星だろうから」
「友雅さん」
一言言って、さっさと他の所へ行ってしまった。
「…あかね」
すっと立ち上がって、あかねをギュッと抱きしめる。
「えっ?!」
「他のやつを頼るなよ。俺が護ってやるから」
うん……、と頷いてそっと頭をイノリに預ける。
暑い夏はこれから。でも、それ以上に熱い二人の恋はもっとヒートアップする。
永遠に燃え続ける――――
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