「ねえ……どうしよう」


あかねは振り返る。しかし、八葉は揃いも揃って首を横に振った。


「神子殿。我らには対処しかねます」

「どーすっか、あかね」


……………………


その周囲が沈黙に包まれた。






こうなったのも、つい一時間前のある事件の所為だった。

満開の桜の下をあかねとイノリが散歩していると、突然目の前に桜吹雪が起こり、視界が塞がれてしまった。


その一瞬に、それは起こった。


目の前の桜の木の下に、先程までいなかった少女が倒れていたのだった。

慌てて駆け寄った二人は、少女が生きているのを確認すると、土御門殿へ連れてきた。

そして八葉と藤姫を呼び、少女が回復するのを待っていたのだ。





「あ、目が覚めるよ」


詩紋の声に、あかねが少女の元へやって来た。


「…大丈夫?」


目を開いたまま動こうとしない少女の顔に手を近づける。

しかし、少女はビクッと身体を強張らせ、あかねの手を弾いた。


「―――ッ!!」

「神子殿!」


頼久が刀を抜こうとしたのを見て、慌てて永泉と鷹通が止める。


「お止めなさい、頼久!」


刀を抜く手を下ろした。見れば少女は先程よりも身体を強張らせていた。


「頼久さん!この娘が怖がってます…」

「すみません。神子殿」


そっと、少女に手をさしのべた。


「大丈夫、怖がらなくていいのよ」


微笑んだあかねに気を許したのか、少女がその手を受け入れた。


「…貴女のお名前は?」


藤姫がニコッと笑って少女に聞いた。

彼女は口を開くが、何も言えないらしく、首を振って口を閉じた。


「口が聞けぬのか……」

「そこの。紙と筆を」

「は、はい」


友雅がちょうどいた女房にいって、書けるものを持ってこさせた。


「これを。喋れなくとも、字は書けるだろう?」


コクリ、と頷いて筆を受け取る。


「……撫子」


あかねが読み上げた。


「撫子殿ですか」

「撫子殿は何故あの場へおられたのでしょうか?」


首を振った。わからないらしい。


「なあ、あかね。そいつって別世界から来た奴だろ」

「私もそう思います。神子殿たちと同じく、我々の見たことのない着物を着ている故」

「ねえねえあかねちゃん。この服って見たこと無い?」


詩紋が指さした。


「あ、そういえば……」


あかね、天真、詩紋の三人は、撫子の服を見て、どこで見たのかを必死に思い出そうとしていた。


「そうだ!これって、あの学校の制服だ!」


あかねと天真の通う学校から少し離れた女子高等学校の制服だった。

途中までは通学路が同じなので、見覚えがあったのだ。


「ああ、そういやそうだな」

「……なあ、俺たちにはさっぱりわかんないんだけどよ」


イノリがふてくされたように言った。


「ごめん、イノリくん」

「やっぱりこいつは、俺たちの世界の人間だ」

「でも、何故ここへやって来たのでしょうか……」


見たところ、鬼と対立できるほどの力もなさそうな少女がどうしてこの時代へやって来たのか。


「…どうやら撫子は本来ここへ来るべきものではないようだ」


泰明が呟く。


「何かの誤作動的なものが生じ、その為時空を飛び越えてしまった。そしてその衝撃で声を失ってしまったのだろう」

「どうにかして、元の世界に戻してあげられないの?!」

「わからない」


解決策を導き出すのに、少なくとも三日はかかるらしい。

その間、撫子はこの土御門殿であかね達と共に過ごすこととなった。









「よく似合うよ、撫子ちゃんv」


すっかり仲良くなったあかねと撫子。

いまはあかねに着せ替え人形化されている撫子の着物選びを熱心にしていた。

現代の制服じゃ、あまりにも目立ちすぎるからだ。

幸い、撫子は普通の外見、寧ろ白い肌に綺麗な黒髪は、この時代にいてもおかしくないような人だった。

着物を着せるとさらにそれがはっきりとわかった。


「あかねー」

「あれ、イノリくん。どうしたの?」


つかつかと部屋の中に入ってくる。


「なにって、暇だったから来たんだよ。他の奴らはあっちの部屋でなんか話してるしよ」


あかねの横に座り込んだ。そして、あかねをジッと見つめて微笑んでいた。

それを見て撫子は横に常備させている筆を取り、紙に何かを書き始めた。

書き終わると、それをあかねに見せる。


「え……『二人の関係は?』って―――!!」

「な、なにいってんだよ。撫子」

「えー?なになに?」


おもしろいものを見るように、詩紋がその紙を覗き込む。


「知りたいの?撫子」


詩紋の言葉に、大きく頷いた。


「じゃ、教えてあげるよ」

「詩紋!」


イノリの制止する声も聞かず、笑いながら撫子に言った。


「二人はね、恋人同士なんだ」


それを聞いて、撫子はキラキラした目で二人を見た。


「詩紋くん!」

「いいじゃない、あかねちゃん。ほんとのことなんだから」


あかねが詩紋を追いかけようとした瞬間、声が聞こえた。


「神子殿―――お楽しみのところ悪いが、イノリと詩紋を借りていくよ」


あかねを上から見下ろすように、友雅が声をかけてきたのだった。

「あ、はい……」


一緒に来ていた天真に連れて行かれ、二人とも部屋から出ていった。


「ごめんね、騒がしくって」


にっこり笑って首を横に振る。そして再び筆を取った。


「イノリくんのどこが好きだって?」


コクコクと頷く。


「そうだなぁ。普段は子供っぽくって、可愛いんだけど、イザって時になるとすごい頼りがいがあるんだよ」


言い終わると、あかねは顔を真っ赤にさせた。


「って、何言わせるのよっ」








そして三日後。再び土御門殿に全員が集まった。


「それで泰明殿―――何かわかりましたか?」

「…これで本当に戻れるかはわからぬが、試してみる価値はあるだろう」


泰明は撫子の前へと歩み寄った。


「他の奴は離れていろ。巻き添えを喰らってもしらないぞ」


そっと、撫子の額に人差し指と中指を当て、何かを唱え始めた。

段々に撫子の身体が光に包まれていく。


「帰っちゃうんだ……」


あかねが寂しそうに撫子を見ていた。

泰明の術が唱え終わり、指を離した。すると彼女を包んでいた光が、輝きを増していった。


「……あかねさん―――」

「えっ…?」


確かに撫子が喋ったのだ。


「あかねさん、ありがとう―――」


そう言った瞬間、光の輝きが最絶頂に達し、その光が弾けた。



次の瞬間、光と共に撫子の姿も消えていた。


「よかった、撫子ちゃん喋れるようになって……」

「ちゃんと帰れたようだ」

「これで、お前達もちゃんと帰れることが証明されたな」

「うん……でも、今はまだ帰れない。鬼を退治しなくちゃいけないから―――」

「もちろん。神子様にいま帰られては、私どもは困りますから」

「そうだね、藤姫ちゃん」






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なんていうか……
ゲームやってない人間がこんなもの書いていいのか?
と思う今日この頃。
でも、こういうオリジ設定入れた話は、
これからも書き続けるんだろうなぁ……
よっぽど酷い苦情が来ない限り。
しかも、どこがイノリ×あかねやねん(汗)一応恋人同士ってコトになってるけど……





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