不死之山真名縁起之碑
我、星に巡りて彼の地に至る
我、風に巡りて洞に臥す
是は、龍なる也
是は、力なる也
道を示して、太極を知り
相生相克の理を示すもの也
我、呪を以って、其を行うべし
慈眼大師天海 銘
「なに、これ・・・」
ここは真神学園旧校舎の最下層。麻雪はそこにあった石碑を読み終え、呟いた。
すると、麻雪の言葉に反応したかの如く、石碑が輝き始めた。
『汝、この陽を求めるか・・・』
石碑が、今までで一番強く光を放った瞬間、その場にいた全員の頭に声が響いてきた。
「何だ!?」
『汝、この陰を求めるか・・・』
「頭に直接響いている・・・いったい何なの?!」
気がつけば、全員が頭を抱えてうずくまっていた。
『汝、この《力》を欲するか・・・』
その言葉に、麻雪は少し顔を上げる。
「《力》・・・?いったい何を言ってるの!?」
頭に響く声は、麻雪の問いに答えることなく、続ける。
『《力》を求めし者よ・・・』
「くっ!!」
『《力》を求めし者よ』
声はどんどん圧力を増していく。
『《力》を求めし者よ!!』
その瞬間、麻雪達の目の前は真っ白になっていった。
ここは、どこ・・・?
暗い闇。どこまでも広がる無限の世界。麻雪はそこに、一人で漂っていた。
「京一くん!?美里さん!小蒔ちゃん!醍醐くん!」
麻雪は慌てて仲間を呼ぶ声を上げる。しかし、その声に反応する人はいなかった。
ピチャン・・・
麻雪の目の前で、一滴の雫が闇の中に落ちていく。
そして、そこから波紋が広がっていく。麻雪は、雫の落ちたところへ近づいていく。
すると、そこには人の姿が映っている。
「美里、さん・・・?」
そこに映っていたのは、彼女の仲間の一人、美里葵にとてもよく似た人物であった。
違うところと言えば、髪を結い上げ、真っ赤な着物を着ているところだけだ。
「どうして?どうして美里さんが・・・」
次に映ってきた人物を見て、さらに驚く。
「京一くん!?それに、これは私・・・?」
そこにいたのは、京一に似た人物と、麻雪に似た人物であった。
京一は、少し長めの髪を上の方で縛り、日本刀を持って座り込んでいる。麻雪はその隣で何処か遠くを見ていた。
「何なの、これは!?」
続いて映ってきたのは、醍醐に似た人物であった。笠を被り、僧の格好をしている。
首には数珠をかけており、何かを探しているように見受けられた。
「何・・・?」
僧の次に映っていたのは、眼。瞳に太極図を写している眼が映っていた。
「うそ・・・」
最後に映ったのは、九角天童。しばらく前に、鬼道衆を操り、菩薩眼である美里を自分のモノにしようとしていた男である。
九角は武士の格好をしていた。頭から血を流しており、刀で自分の身体を支えている状態である。
しかし、それでもなお何かを守ろうとしているのは、見ている麻雪にもわかった。
「私は一体何を見ているの!?」
麻雪が叫ぶと同時に、再び目の前が真っ白になる。
ワォォォォォォン!!
麻雪は、気を失う直前、犬の遠吠えが聞こえたような気がした。
「・・・き。・・・麻雪!!」
誰かに呼ばれる声がして、麻雪はうっすらと目を開ける。そこには、京一達がいた。
「きょ、いちくん・・・?」
全員が、麻雪を心配そうに見ていた。麻雪は、一人一人の顔を見る。そして、ある人物の存在に気が付いた。
「犬神、先生・・・?」
そこには、犬神もいた。
「どうやら無事のようだな。」
犬神は普段通り、麻雪に話しかける。
「犬神先生。どうしてここに?」
しかし犬神は答えない。そして、その場にいる全員に言う。
「・・・あれはお前らの手に負える代物じゃない。
無事救い出せたから良かったが、もう少し遅れていたら、緋勇はあの《力》に取り込まれていただろう・・・。」
京一が、少し怒り気味に犬神に問いかけた。
「あんたはあれについて、何か知ってんのかよ!」
「それはお前達の知るべき事ではない。それより、礼ぐらい言ったらどうだ?」
犬神はかすかに微笑みながら言った。
「助けていただいて、ありがとうございます。」
麻雪のお礼の言葉に、犬神は笑いながら言った。
「思ったよりは、素直なようだな・・・。」
犬神は、洞窟の奥の方を見ながら言った。
「まあいい・・・。これでわかっただろう。もう旧校舎へは近づくな。お前達がここに来る必要はないんだ。わかったな。」
犬神は、全員の方を向いて言った。
「じゃあ、地上までは俺が送ろう。」
麻雪達は、犬神の後をついていく。犬神は、独り言のように呟いた。
「しかし、人の力で、良くここまで来れたものだ・・・。」
そして犬神は、麻雪の方に振り向く。
「そうだ・・・。お前達にこれを渡しておこう。」
といって取り出したのは、何処かの鍵だった。
「これは・・・?」
「それは真神の視聴覚室の鍵だ。お前達なら、そこで何かを視ることができるかもしれない。この地に眠る《力》に纏わる何かをな・・・。」
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