――――初めて逢った時から 好きだった。 |
初めて見た時から―――― 愛してしまった。 |
――――この気持ちは―――― 「…コンスタンツェ、ありがとう……」 「いいのよ。これで、私も貴女も自由の身に慣れたんですから」 誰もいなくなった部屋で二人きり。コンスタンツェは、いそいそと女物のドレスを取り出し、彼女に手渡した。 モーツァルト―――エリーザに戻った彼女は、コンスタンツェに渡されたドレスに着替えた。 「フランツに、よろしく。…幸せに」 「ええ…貴女もね、エリーザ……モーツァルト」 ギュッと抱きしめあったあと、すぐに離れてエリーザは家を出た。 そして、ある場所に向かって小走りをした。 目的の場所はただひとつ。 死んだはずのエリザベート・アンナ・モーツァルトが向かうのは、一軒の屋敷だった。 「……勝手知ったる他人の家ってか」 とはいっても、過去に一度きりしか入っていないのだが。 ドアを勝手に開けて、中に入っていく。 一番奥にある音楽室の前まで来ると、エリーザは深く数回深呼吸をして、ギュッと手を握りしめた。 ギィ……ガチャ。 そこには一人の男が大きなソファに座っていた。 「…えへへ、こんばんは」 「――――!!!」 まるで幽霊を見たような顔で、男は少女を見ていた。 「サリエリさま」 「エ、エリーザ……」 男――サリエリは手に持っていた五線紙をバラバラ、と床に落としてしまった。 「ど、どうしてここに……」 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの訃報は聞きましたでしょう?」 「ああ……」 「コンスタンツェにあらかじめ言っておいたんです」 ツカツカと彼の元に歩いていき、隣にボフッと腰掛けた。 「今回のヴォルフガングの死は、狂言なんです。だって私はここにいるもの」 少女はいつも通りの笑顔でサリエリを見た。 「狂言だと……?」 何のために、と男は問いかけた。しかし、少女はえへへ、と笑うだけで、何も言わない。 サリエリは、ハァ、と溜息を吐いた。 「…話さぬと、家から追い出すぞ」 「えっ!それは困る!!」 「なら、答えた方が身のためですぞ。マドモアゼル・モーツァルト」 わざと茶化すように言った。口の端を少し上げて、ニヤッと笑った。 一方のエリーザは、プゥ、と頬を膨らませて足をジタバタさせた。 「それを、私の口から言わせるんですか?」 「何だと?」 「……私が、真っ直ぐここへ来たので、分かりませんか、サリエリさま」 顔を真っ赤にさせて、俯いてしまった。 それをみて、サリエリはピンと来た。しかし、敢えて何も言わずにニヤニヤ笑った。 それは嬉しさからか、楽しさからか。 「さあ、分かりませんな。高尚なモーツァルト氏の考えは…」 「………」 「どうなさいますか。マドモアゼル」 更に顔を真っ赤にしていく。サリエリは、顔をにやつかせている。 「―――貴方のところへ、嫁ぎに来たのです!」 意を決したのか、エリーザは怒鳴るようにそう告げた。 顔はまるで完熟トマトのように赤く。 「そうか」 「そうか、って…ッッ!!私の初めての告白をなんだと――――」 しかし、エリーザの言葉は最後まで紡がれることはなかった。 次の瞬間には、彼女の唇は……塞がれていた。 押し倒されるような形で、二人はソファの上に寝転がっていたまま、口付けをしていた。 「……美味」 互いに唇を離したあと、彼は小さく呟いた。 「2回目でしたな。…いや、貴女とは初めてでしたかな。マドモアゼル」 「…お分かりでしょうに!」 エリーザは照れ隠しに、上に乗っかっているサリエリの胸板をドンッと叩いた。 サリエリからすれば、そよ風が撫でていったようなその衝撃は、可愛い行動のひとつでしかなかった。 再び覆い被さるように顔を近づけ、口付けを1回・2回・3回…… 「さて。こうして舞い込んできた可愛い子羊をどう料理するかね」 「ちょッ!!」 バサッとスカートを翻して、ソファから立ち上がった。 「どうしたのかね」 「いきなり……するの?」 その言葉に、サリエリは目を白黒させ、その後溜息を吐いた。 「……君は、私のところへ嫁ぐのだろう?」 「で、でも…心の準備が!」 一歩一歩彼から離れていく。その姿はまるで怯えた子猫のよう。 「フゥ。仕方あるまい。今日のところは見逃そう」 「!ありがとうッ!!パパ♪」 「…またか」 「だって、私のパパはもういなくなっちゃったから…」 今度はソファの上でなく、サリエリの膝の上に飛び乗った。 ギュッと抱きつき、ふーっと息をはいた。 「…貴方の温もり、とっても安心できる…」 「………」 しばらくそのまま二人は無言でいたが、いきなりサリエリが呟いた。 「ヴォルフガングの訃報が狂言だといったが…何故、そんなことをしたんだね」 「あら。先程も言いませんでした?貴方のところへ嫁ぐためですわ」 「いや。モーツァルト夫人はどうするんだ?」 「今回の狂言は彼女の為でもあるんです」 「なんだと?」 明らかに不審そうな目を彼女に向けた。 「私の妻、コンスタンツェは、弟子のフランツと恋仲なんです」 「なっ!?」 「ついでにいうなら、私の子どもたちは全て彼の子です。だって女同士ですもの。産めるわけないですわ」 「それはそうだが…」 「でも、貴方となら、僕は子どもを産める」 「……僕じゃないだろう。もう、男じゃないのだから」 指摘され、エリーザはあは、と笑って頭を掻いた。 だがサリエリはニコリともしなかった。 「サリエリ…さま?」 「君は、私がイタリア人だと言うことを分かっていないようだな」 そう告げると、サリエリは彼女の唇を再び塞いだ。そして、彼女の服の中に手を入れ始めた。 「――――!!」 「イタリア人は…なかなか情熱的だぞ」 イソイソとエリーザの服を脱がしにかかった。 「あ……あの……」 「なんだね。子どもが欲しいのだろう?安心しろ。痛いのは最初だけだ」 「そういうことじゃなくて…ここで、するんですか?」 エリーザとしては、音楽室は仕事場に当たるところだ。勿論サリエリにとっても。 彼は一息吐くと、脱がしかけていた彼女の服を簡単に戻し、抱きかかえた。 「すまないな。ムードが必要だったな」 寝室まで連れて行き、ベッドの上にポスッと置いた。 「さて、夜は長い。お楽しみはこれからだな。エリーザ…」 「はい……サリエリさま……」 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 後書き ううう…申し訳ない!欲望に打ち勝てず、かいてしまいました!! サリエリパパとエリーザちゅわんですvvv マドモアゼル・モーツァルトを学校の音楽の時間に初めて見た時、 『モ、モーツァルトが女!?これは同人ネタか!!!』 と考え、我が妹に 『モーツァルトが女で、サリエリってのとラブラブっぽい同人ネタのビデオ見た』 と話したら、早速先生に頼み込んで借りてきましたね。お陰で、今日も美味しいところだけプレイバック♪ なんか、モーツァルトは普通に普通(?)なんですが、 このサリエリ×エリーザに関しては、いくらモーツァルトだとはいえ、CPを捨てられません!! ホントに、意外や意外ですよ。 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト氏は、私の大好きな作曲家の一人です。 彼の音楽は愛してきましたが、私の【同人オーラ】が彼にまで及ぶとは… 『マドモアゼル・モーツァルト』と言うすばらしい作品をありがとう!!!!! |
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