放課後、桜上水の廊下を将は歩いていた。先ほど授業が終わり、日直であった将は、担任である夕子の元に、日誌を届けに行く途中だ。
職員室の前まで来て、将がドアを開けようとすると・・・

「風祭ッ!」

女の子の声がした。自分が呼ばれたことに気がつき振り返る。
其処にいたのは、サッカー女子部のキャプテン兼男子部のマネージャーである、小島有希だった。

「小島さん」
「風祭も日直でしょ」
「そういう小島さんも?」

そう、と頷き、有希は日誌を見せた。

「ちょうどよかったわ。話したいことがあったの」
「うん。じゃ、日誌を置いてきたら」
「そうね。あまり遅れると、夕子ちゃん怖いから」

有希のいっているのが、日誌のことか、部活のことだかはわからなかったけれど、どちらにも当てはまりそうだったので、将は慌てて職員室に入った。



「で、話って?」

今来た道を引き返しながら、将は有希に尋ねた。しかし有希は、将の顔をジッと見ていて、なかなか本題を出さない。

「・・・小島さん?」
「あ、そうね・・・。えっと、聞きたいことがあるのよ・・・」

有希は立ち止まった。それにあわせて将も立ち止まる。

「聞きたいこと?」
「そう。・・・ズバリ聞くけど」

真剣な有希の顔に、将はつばをごくっと飲み込んだ。

「風祭ってさ、水野と何処までいってんの?」


   ズベシャッ!


将はこけた。何もないところで。

「な、何でそこでそういうリアクションになるの?!あ!もしかして、水野とじゃなくって、佐藤くんと?」


   ゴンッ!


さらに床に頭を打つ。

「何なのよ!まさか・・・高井とか?もしかして武蔵森の人?あっ!それとも森長?」
「ちょっ・・・!小島さん!」

将の言葉に、有希はこちらを向いた。

「何?」
「な、なんでそういうことになるの?!」

顔を真っ赤にさせて、将は反論した。

「だって、風祭って色んな人に愛されてない?」
「はっ?!」

将の言葉など聞かずに、有希は話を続ける。

「だってさ、水野なんかはホントにあんたのこと大切に思ってるみたいだし?佐藤くんだって、何だかんだいったって最後には風祭のことだし・・・
 高井も森長もあんたのことよく思ってるでしょ?武蔵森の人達も怪しいのよねぇ」

さらに顔を真っ赤に染め上げ、口をパクパクさせている。

「大丈夫!私、そういうのに理解あるから。・・・んで、誰なわけ?」

その刹那、将の背後に誰かが現れた。二人は同時にその人物を見上げる。

「不破くん」
「何してるんだ、風祭。水野達が探してたぞ」

早く行け、と目で合図して、将をその場から離れさせた。

「あーあ。あんたの所為で、肝心なことが何にも聞けなかったじゃない」

有希の不満の声に、大地はジッと有希を見た。

「・・・のだ・・・」
「ん?なんかいった?」
「風祭は俺のだ」
「え?・・・えええええ!!」

大地の言葉に、有希は大げさなリアクションをして、後ろへ飛び退く。

「だ、だって・・・あんたそういうのに興味なさそうなヤツNO.1なのに・・・!!」
「いつ、そんなことが決まってたんだ?」

こちらの言葉など聞かずに、有希は「ははぁ・・・それで・・・」とか呟きながら歩いていたが、突然手をパンッとあわせて、大地を見る。

「じゃあさ、あんたは風祭と何処までいってんの?」

先ほど将にした質問を、今度は大地に問う。

「・・・相手が女ならば、95%近くの割合で妊娠はするところまで」

・・・。
・・・。
・・・。

「ええええええええ!!!!」

おそらく学校中に響き渡ったであろう有希の叫び声に驚く。

「小島、黙れ(汗)」

慌てて有希の口を押さえる。

「(つまりそれって・・・えっちなことしちゃったってことだよね?)」
「そういうことになるな」
「・・・てっきり風祭は水野とかと・・・」
「あいつは佐藤とだ」

大地の口からとんでもない言葉が漏れる。

「まじっ?!」
「不破くーん、小島さーん!」

二人は気がつくと校庭まで来ていた。将が大きく手を振っている。

「この話は、また今度ねっ!」

有希はそのまま部室のほうへと走っていってしまった。既に練習着に着替えていた大地は将の元へと向かう。

「ん?どうしたの、不破くん」
「いや、何でもない」

何か言いたげな将に話しかけようとすると、コートのほうから、シゲの怒鳴り声が聞こえてきた。

「こら、ポチ!!」
「は、はいっ!」

シゲに呼ばれて、将は慌てて走っていった。

「不破、お前もや!さっさと練習せんかい!」

しかたない、と思いながら大地はコートへと歩いていった。

「頑張ろうね、不破くん!」

コートにはいると、将が笑顔でそういってきた。

「・・・ああ」

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